雨が降ったり止んだりの一日。
午後、雨が上がって薄日が射してくると、急に蒸してきた。
庭に洗濯物を出していると、羽アリが舞っている。
あたりにカブトムシのような匂いがほのかに・・・。
あっ!と思い立ち、縁側の柱に目をやると、無数の羽アリが群れている。
ココから一年に一度、アリが拡散する日があり、今日が”その日”だった。
みるみる内に羽アリの群れは次々と飛び立ち、たんぽぽの綿毛のようにふわふわと空に散って行く。
それを眺めながら、そろそろお出ましだぞ、と思っていると・・・
来た、来た。
(うわ、このカメラ、シャッター切れんの遅すぎ!)
”ツバメ飛行船団”がやってきた。
ツバメたちは縦横無尽に高速で飛び回りながら、羽アリを捕食していく。
「パチン・・・パチン・・・」とツバメが空中で羽アリを捕まえる嘴の音があたりに響く。
僕のすぐ頭の上まで飛んでくるツバメも居て、あたりは狂乱状態に。
自然界の生と死の刹那に出くわすと、いつも間違いなく感じる”波動”のようなものがある。
それは空気中に存在するものなのか、自分自身の中で起こっているものなのか、はわからない。
自分は傍観者なのだが、はっきりと、ざわざわとあたりの空気が揺れているのを感じる。
今日は写真家の来客があり、もう間もなく彼が到着する時間だった。
「間に合うかな・・・」
と思いながら、自宅への進入路を伺いに行く。
・・・・・階段の下に、手を降る彼の笑顔が見えたのは、”ツバメ飛行船団”がどこへともなく飛び去った後だった。
何匹か逃げおおせた羽アリたちは新天地を目指したことであろう。