夕方、島っ子のとっておきの釣り場に案内して貰う。
この、最深部が100mあるという流れが速く、広大な海峡に面した小さな磯場がそれである。
夕暮れに向かう弱い光の中でさえ、すぐ足元の岩場には生きたテーブル珊瑚が並び、その周りを数匹の大きなアオブダイが泳ぎ回り、海底で紫色に光る大きなシャコ貝が見える。
「イカバケ」と呼ばれる疑似餌をつけて竿を振ること数十分、手ごたえと共にその体を青く光らせながら「アオリイカ」が揚がってくる。
柔らかいイカの体がちぎれないよう慎重に取り込む。
釣り上げたばかりのイカの体はひときわ青く輝き、海水を一杯にたたえた細長い体は”水筒”のようだ。
しばらく、そのイカの姿を眺めてから、再び釣りはじめるが、その後はさっぱりアタリがなくなり、イカバケを追ってくるイカの姿もなくなった。
陽が沈み辺りが暗くなり始めたのを潮に竿を納めようと思っていると、西側からザトウクジラの親子が3頭
(後日、動画をチェックしたら4頭だった)、潮を噴き上げながら悠々と泳いでくるではないか。
3頭は寄り沿うように”どんぶらこ、どんぶらこ”?と泳いで行く。
目の前を通り過ぎる時、潮を吹く音が間近に聞こえ、尾びれの内側の白い色がはっきりと見える距離であった。
潮を噴き噴き、泳ぎ去るクジラの親子を見送る先の空には、月がくっきりと輝き始めていた。
島っこの遊び場は何ともワイルドである。