愛知学泉大学に「矢部 隆 博士」を訪ねました。
日本の淡水に棲む亀の生態・行動・民俗の研究では、国内の第一人者であり、僕の“カメの師匠”です。
矢部さんと著者近影(2021)
矢部さんと亀談義に華が咲くと、時間がいくらあっても全然足りません。
僕の人生は”矢部さんに出会って変わった”と言ってもよいでしょう。
「フィールド(自然下)にカメを追う人生」になったのです(笑)。
所帯を持ってから、再び亀の飼育熱が再燃していた僕は
「野生下でのカメの暮らしぶり」に非常に興味を持っておりました。
とは言うものの、それまでの自分のフィールド経験の中で、
自然下でヘビとの関わりは子どもの頃から豊富にあった反面、
故郷の”上野の不忍池”では散々、亀を採って遊んでいたものの、
「これは野生の亀だ!」と確証を持って語れる亀との出会いは皆無でした。
(今、冷静に考えると”不忍池の亀”も”江戸”の野生亀の末裔でしょうか)
そんな中、ふと手に取った動物雑誌「アニマ」のバック・ナンバー(1985)に
「イシガメの1年」という記事を寄稿していたのが、矢部さんでした。
それは当時、大学院の博士課程であった矢部さんが、
とある谷津田に生息するニホンイシガメ個体群の生態を追ったもので、
矢部さんの科学者としての緻密な調査手法と、
亀に対する深い愛情と親しみを感じさせる素晴らしい内容で、
その記事はその後、何度となく読み返したものです。
そして「いつかこの人に会ってみたい!」と思っていたところ、
入会した爬虫類両生類の研究同行会が主催する亀の観察会に矢部さんが来ている、
というではあーりませんか!!
この観察会に参加して、初めて“正真正銘”野生のニホンイシガメとその生息地に触れ、
そして同じく初めて会った矢部さんは、僕と歳が近いのに亀への造詣が深く、
しかしながら大変気さくな方であり、全く偉ぶるところが無く、
僕のような天邪鬼でも、正に“心の師匠”と呼べる方でした。
以来、僕は当時の居住県に亀の生息地を探し出し(1994年)、
自分のメイン・フィールドとする一方、
全国でカメの生息地を探して歩くようになったのです。
この15年間で延べにすると、数1000単位の野生下の亀に接して来たことになります。
(2022年現在も淡水性カメ類の生息状況調査は継続中)
演奏の仕事で初めて行く地域では、
必ず「この辺に、亀は居ますか?」と聞くのが恒例で、
聞かれた方は、「はーーっ??? カ・メ・ですか???」
と云うヤリトリが約30年来、恒例となっております(笑)
(以下、2022年8月追記)
現在はメディアが様々に発達した結果、
カメ類に関する情報にも、誰もが簡単にアクセスできるようになりました。
また正統派(動物園・水族館、大学関係?)含め、
専門家と称する方々も多数見受けらます。
しかし依然として、矢部隆さんは日本のカメ類の野外での生態に関して
真の第一人者であると、新たに話をする度、実感しています。