天理の帰りに鈴鹿市(三重県)に立ち寄りM出くんに会ってきた。
彼とは勤め人時代に”T自動車”の実験林で行なわれる”森作りワークショップ”運営の相棒だった。
今、彼は地元の神社の鎮守の森に「車椅子が通れる広い遊歩道」を作っている。
彼は造園業者でもなく、ただの有志として7年の歳月をかけて、その立派な遊歩道をもうすぐ完成させようとしている。
アメリカで森林消防隊のボランティアをして過ごしている時に、多くの車椅子の人たちが気軽に森林散策を楽しみ、そのための遊歩道が整備されていることに感銘を受け、縁のあったこの場所に他の有志の人たちと共
にこの活動をスタートさせた。
最初は10数人の仲間が居たのだが、皆、次第に足が遠のき彼ひとりが残った。
荒れ放題で藪となった急斜面をきれいにして、健常者向けならば橋を架けて終わりそうな場所に丸太を一段組んではその上に土嚢を敷いて土を盛る、その繰り返しで緩やかなスロープの道を作ってきた。
全て現場合わせで”ほとんど1人”での作業は、手作業が主で、時間がかかり、この7年間はこの活動に専念してきた。
「相変わらずドンくさくて、やたら時間かかってますわ」と笑う彼と遊歩道を歩きながら、
「木を植えた人」の”あとがき”を思い出した。
本当に世の中を変えるのは権力や富ではなく、
また数と力を頼む行動や声高な主張でもなく、
静かな持続する意志に支えられた、
力まず、目立たず、おのれを頼まず、
速攻を求めず、ねばり強く、無私な行為です。もうすぐに迫ったこの遊歩道の完成を前に、彼は思い悩む日が多いという。
これからどうするのか・・・。
次にどう繋げるのか・・・。
彼には勿論だが、この活動を支えてきた奥さんやそのご家族にも本当に頭が下がる。
世の価値観が統一されて、損得だけで生きている人が多い中、
いつの時代にも自分の信念の元に無私の心で世に貢献した人が世の中を変えてきたのだろうと思う。
そんな思いを新たに堅い握手(M出くんの握力は100キロ?)を交わして帰路についた。